第30回 JAMCOオンライン国際シンポジウム
2022年2月~2022年3月
持続可能な世界を目指して~コロナ危機の中の挑戦~
教員研修としての遠隔協働経験の可能性と課題
〜私立高校教員と大学生によるSDGsゲーム教材開発を事例として〜
本稿では、オンラインで実施した私立高等学校の教員研修を取り上げる。具体的には高校教員と大学生が遠隔で協働し、SDGsをテーマにしたゲーム教材開発を教員研修とした事例において、参加した高校教員らが(1)何を学び、(2)それを如何に日々の授業実践に活かすことができるかについて明らかにすることを目的とする。なお、本稿では高校教員と大学生が遠隔で協働して実施したオンラインの教員研修を「プロジェクト」と呼ぶ。
本稿で取り上げるプロジェクトは、屋久島おおぞら高等学校(以下、高校)と教育工学を専門とする教員2名(第2・第3筆者)の間で企画したものである。授業設計の向上を目指した教員研修について、公立の高等学校では自治体や都道府県別に定期的に開催されているが、私立高校ではそれぞれの高校で実施するか、日本私学教育研究所(2021)がおこなう研修会に希望して参加することがほとんどという現状である。そこで、高校側では、本プロジェクトを高校が独自におこなう教員研修として位置付けた。
学習指導要領の改定に伴い、探究を軸とした授業がこれまで以上に重視されるようになった。そのような授業実践がおこなわれるようになるためには、まず教員自身が探究を経験することが重要である。高校教員自らが探究学習を経験するとともに、そのプロセスを省察することで、生徒の探究学習を指導できるようになることを高校は目指し、プロジェクトを実施した。
本プロジェクトは、2021年3月に4日間のオンライン教員研修として実施した。高校がある鹿児島県の屋久島は日本でも有数の豊かな自然がある。それらを学習のリソースとした際に親和性の高い「SDGs」を探究学習のテーマとした。探究学習には、仮説実証したり、フィールドワークや文献調査をしたり、問題解決を提案/モノの開発をしたり、多様な形態があるが、いずれも課題の設定、情報収集、整理・分析、まとめ・表現のプロセスは共通している。本プロジェクトでは、開発型の探究活動として、「SDGsの理解促進のためのゲーム教材開発」を目的として設定した。
以下、2章では「人の学習・発達」の理論的枠組みをもちいて本プロジェクトの意図を述べる。続く3章では、SDGsをテーマにしたゲーム教材開発のプロセスを説明するとともに、開発された教材について概説する。第4章では、研修に参加した教員の振り返りを通し、教員研修としての遠隔協働経験の可能性と課題を整理し、最後に今後の展望と課題を考察する。
2. 探究活動としてカードゲーム教材の開発
本プロジェクトにおいて、探究学習としてゲーム教材開発に取り組んだ背景として次の2つがある。
第一に、ゲーム(言い換えると「遊び」)を開発する経験が、探究学習で重視される対話的、創造的、想像的、協働的な学びとつながるからである。「遊び」は、100年以上も前から学術的な関心を集めている分野である。遊びは、発達理論、教育理論、治療理論、歴史、人類学、社会的儀礼、芸術を理解する上で中心的な役割を果たしてきた(Gordon 2012)。しかしながら、遊びは、楽しい行動という直感的概念にある程度支えられており、明確な定義はない。また、遊びについての研究は幼児期の発達研究を中心としておこなわれているが、大人を対象としたものは多くはない。そのような中、ヴィゴツキーの遊びの概念をさらに発展させたL.ホルツマンは、遊びを通した発達は、子どもだけではなく大人にもみられることを理論的、実践的に主張している(ホルツマン 2014)。ホルツマンは、遊びとは、本来、対話的、創造的、想像的、協働的な人間の営為と位置付ける。本プロジェクトでは、この遊びを「ゲーム開発」とし、参加者はゲーム開発を、多様な強みや才能を持つ他者と対話的に課題を設定し、協働的に情報収集、整理・分析して理解を深めていくと同時に、開発したいものや使っている人を想像することになる。このプロセスがまさに探究学習を経験する活動として有用であると考えた。
第二に、多角的な観点を取り入れた教材開発の経験となるからである。ゲーム教材に限らず、教員が教育プログラムや授業をつくるさいには分析(Analysis)、設計(Design)、開発(Development)、実施(Implementation)、評価(Evaluation)のプロセス(鈴木2002)を用いることがある。先に述べたように、私立高校の教員は研修機会が限られていることから、校外の意見を取り入れた教育プログラムを作成しにくいことがある。本プロジェクトでは、大学生との協働により教材を開発するということを目的としている。これは外部者と関わりを持たなければ教材を開発できない状況であるといえる。それでも教員は、指導する高校生と年齢の近い大学生の意見を取り入れながら教材を作ることになるため、外部者からのパワーバランスは極力抑えられる。また島外の大学生たちとの協働であることから、屋久島の資源や魅力を島の外(東京)の人に伝える必要がある状況でもあるため、教員にとっては必然的に屋久島にあるさまざま資源を見直し、再発見する機会となる。このように、高校教員は、多様な他者と探究を経験することとなる。多様な他者との探究を通してその可能性や課題を経験することで、実際の探究の指導にも活かされることが期待できると考えた。
3. 実践の概要
本プロジェクトへの参加者は、通信制高校の屋久島おおぞら高等学校の教員10名および東京都の2大学の学生13名の計23名である。高校側の教員研修として、教員自らが探究学習を経験するとともに、そのプロセスを省察することで、生徒の探究学習を指導できるようになることをねらいとした。このねらいのもとオンライン教員研修の企画を第2、第3筆者が受けることになった。教員研修に大学生も参加させることで、高校の教員研修のねらいを達成させようとし、2021年3月にSDGsに関連したゲーム教材の開発を目的としたプロジェクトをはじめた。
実践の流れは表1の通りである。1日目は、第2、第3筆者が、本プロジェクトの目的と概要を概説したのち、本プロジェクトの意義を共有するため、「遊びと学び」および「教材開発理論およびSDGsを踏まえた授業設計」の2つのテーマで講義を行った。また、既存のカードゲーム2種類をとりあげ、それらの教育的活用について全体で意見交換をした。その後、高校教員と2大学の学生ら混合の4チームをつくり、ゲーム教材開発に取り組んだ。なお、学生・教員の立場の違いを意識させないように、オンライン上で参加者は「名前のみ」を表示させたり、その名前のみで相手を呼んだりするようにした。
2日目からは、参加する教員は校務があったり、学生もアルバイトがあったりなどそれぞれの予定があることから、活動する時間や進め方は各チームに任せ、4日目に開発したゲーム教材を発表することだけを決めてそれぞれ取り組んだ。
4日目は、それぞれのチームが30分ずつ成果発表を行い、開発する教材の妥当性や意義の観点からさらにより良くするための議論をした。
表1:実践の流れ
日付 | 内容 |
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1日目 |
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2日目 | 各グループで検討 |
3日目 | 各グループで検討 |
4日目 | 開発した教材の紹介と質疑応答 |
*いずれの日も10時から16時の時間で開催
3. 1 教材開発理論とSDGs
1日目に実施した講義において、教材開発理論については鈴木(2002)の教材設計理論(鈴木 2002)を参考に、表2のように教材開発のプロセスを説明した。本プロジェクトの4日間では、ステップ4までを進めることを確認した。
表2:教材開発理論
プロセス | 具体内容 |
---|---|
(1)教材をイメージする |
自分がよく知っている内容/よくできることか? 教材づくりの協力者は(実際に学ぶ必要のある人は)だれ? 短時間で学習できるか? 個別学習教材で教材が「独り立ち」できるか? |
(2)教材づくりをイメージする | Plan – Do – See |
(3)出入り口を明確にする | 行動目標・評価条件・合格基準を明確にして学習目標を設定する |
(4)教材の構造を見きわめる | 出口からさかのぼって、入り口まで逆行する |
(5)教材を作成する | 指導方略に基づいて教材を準備する |
(6)形成的評価を実施する | どこを直せばもっと良い教材になるのか、を知る |
(7)教材を改善する | 形成的評価に基づいて教材を改善する |
鈴木(2002)
さらに、SDGsに関連した授業については、「つながり」を意識できるテーマ性・内容にすることを設定した。具体的には教材作成の各ステップにおいて、自分と他者とのつながり、自分と地域とのつながり、日本と世界とのつながり、自分と世界とのつながりをとけ込ませることをゲームの条件とした。これらのつながりは、SDGsの目指す、地球市民としての「私」や世界的な課題を「自分事」として捉えるきっかけづくりとなると考えた。
3. 2 開発された教材
1日目の内容をもとに各チームが作成したゲーム教材の概要は表3の通りである。教材作成は各チームごとにその経過やアイディアをクラウドを用いて整理していった。それぞれの様子は写真1から写真3に示す。
表3:作成したゲーム教材の概要
No | タイトル | 目的 | 基本ルール |
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1 | 屋久島すごろく |
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屋久島に訪れる観光客を対象にしたスゴロク形式のゲーム。屋久島を3泊4日でいかに堪能できるかを競う。自分が楽しむためだけでなく未来に自然を残すことも考える。楽しむ観光に加え、環境を意識したエコな観光も両立させる。 |
2 | おじゃんせ!屋久島じゃーにー |
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「食材」をキーワードとした、スゴロク形式のゲーム。屋久島での生活やミニゲームを通してポイントを集めていく。島で起きる事件を解決するなど、屋久島に関連した水平思考ゲームも組み合わせる。 |
3 | ドキドキ!無人島生活 |
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無人島での生活をより豊かにして「ハート」を獲得するスゴロク形式のゲーム。島を探索し、そこで起こるイベントから参加者のワクワク、ドキドキを共有する。 |
4 | ドコイク・ナニスル? |
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決められた道具を使って、その場で屋久島の一番の「楽しい遊び方」を提案するゲーム。楽しい遊びポイントを一番多く集める。 |
写真1 クラウドを用いてチーム内の考えを可視化しながらアイデアを完成させていく
写真2 各チームのアイデアをゲームの形にまとめる
写真3 SDGsと関連させたゲームの内容説明の様子
4. 教員研修としての遠隔協働の可能性と課題
本稿の目的である、参加した高校教員らが(1)何を学び、(2)それを如何に日々の授業実践に活かすことができるかについて明らかにするために、データ収集として参加教員への自由記述の質問紙調査を行った。対象は本プロジェクトに参加した管理職2名を含む9名の教員である(表4)。
表4:プロジェクト参加教員
参加教員 | 教員歴 | 専門教科 |
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教員A | 1年 | 国語 |
教員B | 1年 | 英語 |
教員C | 1年 | 理科 |
教員D | 3年 | 地歴公民 |
教員E | 3年 | 数学 |
教員F | 4年 | 国語 |
教員G | 5年 | 英語 |
管理職A | 11年 | 保健体育 |
管理職B | 13年 | 理科 |
4. 1 データ収集と分析
9名の教員に対して、無記名による質問紙調査を2021年7月に実施した。質問項目は、(1)プロジェクトに参加したあなたにとっての学びはありましたか、(2)今回の「遠隔協働」を経て、あなた自身に変容はありましたか、(3)今回の経験は、授業を実施するうえで、SDGsの視点を取り入れることへの意識に繋がっていますかの自由記述3問と、(4)今後も「遠隔協働」の機会があれば参加したいですかという二択形式1問であった。
質問紙調査から得られた自由記述は(1)記述を文節に分け、(2)それらの意味の近いものをカテゴリとしタイトルを付与した。その結果、3つのカテゴリが生成された。
4. 2 データ収集と分析
生成された3つのカテゴリの特徴と教員の回答の一部を示す。
①世代を超えた協働体験とアイディアや思考をまとめる手法
これまで実施されてきた教員研修は、教員間で実施されることがほとんどで、立場が違う人との関わり合いの機会はほとんどなかった。教員にとっては大学生という自分たちより若い世代との協働であり、彼らのもつ異なる観点や価値に触れることになった。
さらに、本プロジェクトで用いられたクラウドによる情報共有は、参加者の考えを可視化させることに繋がっていた。対面ではないからこそ、個人の考えを表現できる場の重要性を教員は認識していた。
①に関する教員の回答の一部 |
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②自己成長に必要な「成長実感」を得るための機会
研修で経験した遠隔による協働作業や、ゲーム教材開発という探究を経験することで教員は新たな視点をもつことになった。経験することでその意味や意義を直接的に理解することにつながり、自身の授業に組み入れるイメージとなっていた。これらは教員の自己成長に必要な「成長実感」といえる。
②に関する教員の回答の一部 |
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③授業づくりにSDGsを取り入れる際の「捉え方」
新しい知識を得たとしてもそれを、実際の行動にどのように落とし込んでいくのかということについては、一度経験をするとのそうでないのとでは雲泥の差がある。SDGsは概念が大きく、これまで高校では個人の教員の授業に落とし込むためのイメージがもてていなかった。つまりSDGsという概念は知っていても「ヒトゴト」であった。それが本研修を通し「ジブンゴト」になることで、次の一歩を動き出すための行動変容のきっかけとなっていた。
③に関する教員の回答の一部 |
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4. 3 考察:教員研修の可能性と課題
本節では、結果を踏まえ教員研修の可能性と課題を考察する。まず、教員研修の可能性として、空間・仲間・時間をキーワードとした「内側と外側の違いを生み出す3つの間」を説明する。次に、教員研修の課題を2点述べる。
- (1)教員研修の可能性:内側と外側の違いを生み出す3つの間
コロナ禍により、教育現場のオンライン環境整備をはじめとするICT活用は加速している。そのためこれまで以上に素早く、かつ簡単に学校外の人や組織などの「外側」の世界とつながることができるようになった。この環境の変化は、学習者のみではなく、教員も同様であった。それは本プロジェクトのように教員研修の可能性の広がりを意味し、その可能性は学校の「内側」よりも「外側」の空間にこそ広がっていると言える。
このように「外側」の世界とつながる空間で、いつもとは違う「非日常感」のある時間を教員は過ごした。普段は交わることがないであろう大学生たちとゲーム教材を作成するというチームの仲間として協働する経験に繋がった。
教員自身が踏み込んだことのない領域にこそ、引き込まれるような新鮮な驚きや感動が潜んでいて、その中でこそ、知的好奇心がくすぐられ、思わず心が揺さぶられるようなきっかけになる時間がもてたといえる。
つまり本教員研修は、日常業務とは違う空間での活動、いつもは会うことがないような仲間との協働、いつもとは違う感情に気づける時間であったといえる。この空間、仲間、時間という「3つの間」が、起伏なく平坦な時間になりがちな「内側」に刺激を生み出したと考えられる。それほど、「外側」には学びを楽しむことができる環境、ひいては自身の成長を促進することができる可能性に満ちているといえる。 - (2)教員研修の課題
教員研修の課題として2つある。ひとつは研修目的の理解である。「例年、この時期には○○の研修に参加することになっているから」や、「校長や教頭に参加しろと言われたから」という、まるでタニンゴト感覚の研修参加者が従来の研修において存在することは想像に難くない。しかし「何のために自分はここにいるのか?」という問いに対し、明確に答えられない研修参加者も少なくない中で、そのような課題の改善の糸口になることが示唆される。なぜなら、4.1の質問項目「プロジェクトに参加したあなたにとっての学びはありましたか」という問いに対し、参加したすべての教員が「あった」と回答していたり、「何のために自分はこのプロジェクトに参加しているのか?」を確認する機会が、本プロジェクトの事前・事中・事後のすべてで行われていたことが確認されていたからである。何を学ぼうとしているのかという「研修目的」の理解を「事前」に明確にさせておき、「事中」での活動を通じて、目的を再認識することになる。そして、それらの研修でインプットしたことを日々の業務という「事後に」ふりかえることで、次の行動計画を立てることにつながるといえる。
もうひとつは、研修における双方向性の確保である。知識伝授型研修では、研修受講者は講師から知識を得ようとするあまり、無意識のうちに研修に対して受け身になることが想像される。講師と受講者が明確に分かれている場合は、講師から受講者への一方向の知識伝達になり、受講者自身が能動的な関わりをするような環境になりにくいといえる。対面研修であろうが、オンライン研修であろうがこれらは起こりうる。そこで、そもそもの研修形態を一方向の知識伝達ではなく、講師と受講者、あるいは、受講者同士の双方向性にすることが必要であると考える。例えばオンライン研修の場合は、クラウドシステムを用いて協働編集ができる仕組みや、ビデオチャットをもちいるなら少人数で話し合いができるようにし、参加者間の言葉や画面によるやり取りが行いやすい環境を整備することが必要である。同様に対面研修の場合も参加者間の双方向性を基軸にした研修内容の仕組みづくりが必要である。このような環境整備の必要性は、4.2に示す教員の回答として挙がっている。
本稿の目的は、高校教員と大学生が遠隔で協働し、SDGsをテーマにしたゲーム教材開発を教員研修とした事例において、参加した高校教員らが(1)何を学び、(2)それを如何に日々の授業実践に活かすことができるかについて明らかにすることであった。
- (1)参加した高校教員の学び
本プロジェクトに参加した教員の学びとして、ゲーム教材開発という探究を経験したことが挙げれられる。ゲーム開発を行う過程で、上下関係のない「仲間」としての参加者がそれぞれの強みを持つ他者と対話的に課題を設定し、協働的に情報収集、整理・分析して理解を深め、開発したいゲーム教材やそのゲームを使用している人を想像できていた。これは、課題設定、情報収集、整理・分析、まとめ・表現という探究学習のプロセスであろう。このプロセスにおいて、「遊び」がテーマあったことが、従来おこなわれてきた講師と参加者間による知識伝達型の研修の枠組みや、「教材作成」や「人間関係」などの枠組みを取り外し、参加者間の協働や自由な発想を促した要因であると考えられる。 - (2)日々の授業実践への展開
教員は本プロジェクトを通し、SDGsへの理解や他者との協働という多角的な観点を取り入れた教材開発の経験をすることができた。これらの経験からSDGsを「ヒトゴト」から「ジブンゴト」として意識するようになり、「授業でもSDGsの17の項目に関して、生徒に考えさせる時間を長めにとるようになった」と述べるように、日々の授業で取り入れるようになっていた。
このような日々の授業実践への展開への要因として考えられるのは本プロジェクトを通した「経験」である。まずは教員自身が対話的、創造的、想像的、協働的な経験や、それをクラウドツールを用いて実現することができるという直接的な経験が自身の授業への展開を促してくれているといえる。
今後の課題として、教員研修の実施形態やテーマ設定がある。従来型の対面研修のような形態は行いにくい状況が今後も続いた場合、オンライン研修が導入されていくことが予想される。それでも本プロジェクトのようにオンライン研修だとしても双方向性の環境を整える必要があるだろう。
教員研修のテーマ設定は教育現場の目先の成果を追求することに囚われず、教員が授業とは直接かかわりが薄そうな内容であったり、あるいは教員の興味関心がある分野だったりを研修テーマにすることもありうる。それが授業やクラス運営、学校運営に直接結びつくものでないとしても、そこで学ぶことが教員自身が「楽しい」と感じられるならば、おのずとその経験は自身の授業に向いていくと考える。
- Gordon Burghardt(2012)Defining and Recognizing Play, Anthony D. Pellegrini (Eds.)The Oxford Handbook of the Development of Play, Oxford University Press: pp.9-18
- JAPAN SDGs Action Platform(2019)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/about/ (accessed 2021.10.29) - ロイス ホルツマン (著) 茂呂 雄二 (訳)(2014)遊ぶヴィゴツキー: 生成の心理学へ, 新曜社
- 鈴木克明(2002)教材設計マニュアル.北大路書房
- 日本私学教育研究所(2021)
https://www.shigaku.or.jp/ (accessed 2021.10.29)
付記
本研究の一部は、JSPS科研費 19K02984の助成を受けたものです。
菊池 亮平(屋久島おおぞら高校) / 今野 貴之(明星大学) / 岸 磨貴子(明治大学)
菊池亮平(きくちりょうへい)
学校法人KTC学園屋久島おおぞら高等学校 勤務
2019年4月教頭として同校に着任
2021年4月より副校長として学校運営に携わる
今野 貴之(こんの たかゆき)
明星大学教育学部 准教授。専門は教育工学(授業研究・教師教育)。2019年日本教育工学会第34回奨励賞受賞。日本国内、および途上国の教育機関やNPO/NGOと連携して、教師の授業力向上や他者と協働する仕組みづくりのための研修や授業研究を実施・研究している。著書『主体的・対話的で深い学びの環境とICT-アクティブ・ラーニングによる資質・能力の育成』(東信堂2018)がある。
岸磨貴子(きし まきこ)
明治大学国際日本学部准教授。教育工学専門。研究テーマは「多様性をつなげる教育、多様性がつながる学習環境デザイン」。国内では、学校教育において総合的な学習の時間をはじめ「探究学習」を研究対象とし、インプロなどパフォーマンスを軸とした協働的な学びのための教育プログラムや教材を開発している。国外では、中東(シリア、パレスチナ、トルコ)を中心に、難民など社会的に脆弱な立場におかれる子どもを含む誰もが個性や経験、強みなど多様性を発揮し共に発達していけるような場のデザインについての実践および研究を行なっている。