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JAMCO オンライン国際シンポジウム

第23回 JAMCOオンライン国際シンポジウム

2015年2月~2015年10月

日本のテレビ番組のアジア・中東での理解の実態

JAMCO制作のDVDを視聴したハノイ師範大学幼児教育学部の学生に対する調査

タオ・ティ・ブゥー、トゥエン・タン・ディン

はじめに

1.研究の論理的根拠と目的

 2007年12月7日、ハノイ師範大学(HNUE)児童文学センター(CLC)と放送番組国際交流センター(JAMCO)は、両者の正式な関係を宣言する覚書に調印した。覚書の調印から7年を経た現在まで、同大学の幼児教育学部の学生たちは、JAMCO制作のDVDと関連教材を活用する機会を与えられている。

 本調査は3つの異なる学生グループを対象とする試験的な調査である。この調査は、CLCに対して、DVDが学生の考え方、認識、態度、行動に及ぼす影響をより深く理解するための手助けをする。その一方でCLCも、学生が本当にDVDを理解し、その内容を学び、学習に活用したいと考えているかどうかを把握したいと望んでいる。

 またこの小規模だが本格的な調査を通じてCLCは、その能力と研究成果を提示し、当DVDに対するベトナム人視聴者の一般的な認識、および幼児教育を専攻する人たちの認識をJAMCOがより深く理解できるようにしたいと考えている。これは両者の長期的な協力関係のために有益であると考える。この初期研究が大規模な研究の下地になるとともに、JAMCOとCLCの協力関係も一層緊密なものになるだろう。

2.研究の対象

‐目的:ハノイ師範大学幼児教育学部の学生の、日本のJAMCOが制作したDVDに対する認識と考え方を調査すること

‐研究対象:
+ハノイ師範大学幼児教育学部K55プログラムの学生37人(2008年実施)
+ハノイ師範大学幼児教育学部K60プログラムの学生44人(2013年実施)
+ハノイ師範大学幼児教育学部K61プログラムの学生46人(2013年実施)

3.課題

‐JAMCO制作のDVDに対する学生の認識についての調査
‐JAMCO制作のDVDに対する学生の考え方についての調査
‐JAMCO制作のDVDセットについて、学生の利用意向の調査
‐JAMCO制作のDVDが、学生と一般の視聴者にもたらすメリットについての調査

研究結果

A.研究対象の概要
B.研究結果
B1.K55プログラムの学生における研究結果(『ピタゴラスイッチ』[DVD1]、『ざわざわ森のがんこちゃん』[DVD2]、『こどもにんぎょう劇場』[DVD3])

タオ・ティ・ブゥ‐トゥエン・タン・ディン

1.3つのDVDのセットにおける、内容およびテーマによってDVDを分類する学生の能力:

 JAMCO制作のDVDは、それぞれが明確に区別される。そこで、学生が各DVDセットとテーマを分類する能力を持つかを調査した。結果は以下のようになった。

DVDセット 正確なDVDを結びつけ、テーマを正しく認識 誤ったDVDを結びつけ、テーマを間違って認識
人数 % 人数 %
セット1 37 100.00 0 0
セット2 31 84.00 6 16.00
セット3 32 86.00 5 14.00

 この結果から判明したのは、これらが異なる二つの側面(内容と形式)であるにも関わらず、DVDの見分け方を一度把握した学生は各DVDセットのテーマを正しく認識する可能性が高いという点である。例えばDVDセット1は科学的発見の内容であるため、ナレーターが人形であるという特徴があっても、主要なテーマは科学である。調査では、学生がこのDVDセットとテーマを100パーセント正確に結びつけていることが分かった。DVDセット2『ざわざわ森のがんこちゃん』とDVDセット3『こどもにんぎょう劇場』のDVDとテーマについては、正解の割合がこれより低くなっている。このことから、生徒の認識は的確であるが完全ではないことが判明した。DVDセット2については、主にDVDについて正しい組み合わせが見られ、テーマの組み合わせは必ずしも正しくなかった。特に言葉の壁があるということに加えて理解が十分でないため、DVDセット2とDVDセット3を相互に取り違えていた学生もいた。これが原因で間違った組み合わせに至っていた。とりわけDVDセット3は、その内容が世界のおとぎ話であると間違える学生が多かったが、実際の内容は子供に分かりやすく善行を説く寓話である。そのため、正解は寓話のおとぎ話でなくてはならない。

 しかしながら、基本的には大多数の学生が正解を提示している。これは、JAMCOが制作した内容といきいきとしていて理解しやすいアニメーションのおかげであると言えるだろう。言葉の壁があるにもかかわらず、いきいきとしていて素晴らしい映像は多くの学生を惹きつけ、各DVDの内容と形式を分類するうえで正しい方向性を把握するのに役立っている。

2.科学的発見の内容のDVD (DVD セット1)に対する学生の認識と考え

 本項目では、科学的発見の内容のDVDセットに対する学生の認識と考え方を調査する。このDVDセットの典型的なテーマは、子供に一般的な科学について理解を深める手助けすることなので、始めの質問では、制作者が科学的内容をどのように扱っているのかと学生にとって最も印象深い番組の場面を扱った。その結果は以下の通りである。:

2.1 学生にとって、DVDセットにおける興味深い点は?

項目 興味深い点 人数 %
1 子供への自然で効果的な教え方 25 65.65
2 子供の好奇心と自己発見力を高める 18 49.00
3 子供の想像力を高める 18 49.00
4 子供の関心を高める 16 43.24
5 愛らしくて重要な意味を持つ人形のナレーター(「テレビ姿の神様」と「学者のような百科事典」)の姿 09 24.00
6 科学的な内容が、実生活に関連したもので、わかりやすく活き活きと表現されている 10 27.00
7 全く面白くない、あるいは理解しづらい 04 10.81

 各DVDの時間は長くない(約15分)。各DVDはいくつかの短いエピソードで構成されている。しかし、学生は「DVDセット1では、何に興味をひかれますか。」という自由回答式の質問に対して、興味深く感じた点について様々な意見を積極的に提示している。答えを集約すると、表2.1に提示した7つの主要な意見にまとめることができる。この結果から、このDVDセットについては多くの意見があることがわかる。7つの意見のうち6つは、DVDに対する肯定的な考えである。DVDに不満を示しているのはごく少数の学生である(7番目の項目)。

 6つの肯定的な意見において、学生が関心を抱いた点は多様である。DVDの内容に関する面もある。またDVDの形式に関する面もある。年少の視聴者の考え方、想像力および感情にDVDが与える影響についての意見がある一方で、DVDで提示された日本での子供への指導法に関心を示した意見もある。このことから、このDVDセットは学生に様々なメリットをもたらし、学生はそれを今後の学習に活かすことができる。このように、学生たちはDVDセットを一般の視聴者のように娯楽のために見ているのではなく、幼稚園の教員の立場で視聴している。学生がDVDセットに対して抱く関心は、三つの事柄の関係性だ。つまり、教育者‐幼児‐視聴覚教材である。この観点からみると、JAMCO制作のDVDセットに対する1の考え方「子供たちへの自然で効果的な教え方」というのが最も包括的な考えで、大多数(65.65%)を占めている。2、3、4、6の意見は1の意見よりも詳細を検討しており、これらもかなりの数を占めている。5の考えはDVDセット1の内容には直接触れていないが、その形式の詳細に言及しており、これも視聴者の関心を引く効果と関連する項目である。

 まとめると、このDVDは一般的な視聴者、そして特に幼児教育学部であるK55 プログラムの学生に深い印象を残すDVDセットであるといえる。DVDセット1に関して集約した意見を通じて把握できるのは、このDVDセットが成功を収めているというだけではなく、未来の幼稚園教諭から積極的に受け入れられている点である。

 以下の2つのデータ表から、学生がこのDVDセットを快く思っていて、内容も心にしっかりと残っていることが把握できる。

2.2 このDVDセットのどの場面が最も興味深いか。

場面 人数 %
箱または平面 10 27.00
動く六面体 9 24.00
ドミノの場面 14 37.83
冒頭のイラスト 4 10.81

 DVDセット1には科学的知見に関する場面が多く含まれるため、学生の興味は特定の場面に集中しておらず、様々な場面に及んでいる。その結果が表2.2に表れている。

2.3 学生は様々な場面を理解する能力をもっているか。

a) DVDセット1のDVD1: 噴水の音楽、足音のリズム、タイプライターの場面 (質問 4)

項目 関係の意味合い 人数 %
1 すべてがリズミカルな動きをする。 31 83.78
2 各映像には関連性がない。複数の場面が移り変わるだけである。 3 08.11
3 すべての場面が心を和ませ元気づける雰囲気を伝えている。 8 21.62
4 すべてがタイプライターの動きをシミュレーションしている。 27 72.97
5 新しい一日の始まり:噴水はあふれる活気、足音のリズムは一日を始める朝の運動、タイプライターは日々の仕事の準備を表している。 1 02.70

 上記の場面は、DVDセット1のDVD1の主要な映像ではない。「今日のスイッチ」というコーナーの場面である。それにもかかわらず、こうした場面でさえ、学生に面白い考えを生み出すことや関連性を見出す手助けをする。これはJAMCOの顕著な成果の一つと言える。このコーナーの場面は、何の影響も受けていない自由で自然な形で構成されており、視聴者に特定の考えを押しつけない内容になっている。それどころか、これらの場面は論理的な関係性を示唆し、視聴者に対して自由に想像し、関連性を見出す余地を与える。興味深いのは、学生が上表で示した5つのどの関係性の意味合いも、ある程度筋が通っているという点である。しかしながら、項目1 (83.78 %) と項目4(72.97%)の考えを示した学生が多かった。

b) DVDセット1のDVD2: こま、陶器づくり、クリームケーキ、アイススケート(質問5)

項目 関係の意味合い 人数 %
1 すべての項目が、遠心力に基づくらせん軸を説明するという関連性を示す。 35 94.59
2 意図なく編集され、特に関連はない。 02 05.41
合計 37 100.00

 これは、DVDセット1のDVD1にある「噴水の音楽、足音のリズム、タイプライター」の場面とは異なっている。DVDセット1のDVD2にある「こま、陶器づくり、クリームケーキ、アイススケート」の場面は、「回転するもの」という題名により中心となるテーマが定まっている。したがってこれらの場面の関連性の意味合いはより強くて理解しやすく、示唆的な題名もつけられている。このため大多数の学生が場面のつながりを認識している。こま、陶器づくり、クリームケーキ、アイススケートはすべて、遠心力に基づくらせん軸を説明するという関連性を示している。このため「回転するもの」という題名がこのエピソードにはつけられている。このエピソードに関して、視聴者全般、特に幼児教育学部であるK55 プログラムの学生は、生産から料理、またはスポーツや芸術に至るまで、生活のあらゆる側面にあてはめられた遠心力に言及することができている。「回転するもの」のような映像は、推測と一般化という知的能力を鍛えるうえで大きな効果をもつ。

3.DVDセット『ざわざわ森のがんこちゃん』に対する学生の理解と態度(DVDセット2)

3.1 当DVDセットの主要なテーマに関する学生の理解

内容 人数 %
善行 31 85.00
知力 02 05.00
視覚的鮮やかさ 02 05.00
美的特徴 02 05.00
合計 100.00

3.2 DVDセット2に見られる教訓:

DVD 教訓 人数 %
1. 森のキノコまじょ a. 慎重で機転に富んだ心 08 22.00
b. 勇気と自立 13 35.00
c. コミュニティと相互支援 14 38.00
d. 思いやりと寛大さ 0 00.00
合計 100.00
2. きょうから学校 a. 謙遜と協調 26 70.00
b. 学校は素晴らしいことが満ち溢れた楽しい場所 18 49.00
c. 学校生活は窮屈で危険である 0 00.00
d. 学者らしくて厳しい先生 02 05.00
合計 100.00

 調査データからは、ほぼすべての学生が正しく内容を理解していることがわかる。しかし、このDVDセットの全般的な美的特徴 (5%)や視覚的鮮やかさ (5%)を高く評価していない。このことから、内容の重要性と同程度に、映像や色彩も考慮しなければ受け入れられる番組にはならないということが分かる。

4.DVDセット3『こどもにんぎょう劇場』に対する学生の理解と考え

4.1 DVD『かちかちやま』

a) 『かちかちやま』に出てくるおばあさんの行動に賛成しますか?

はい:14/37(37.84%)

いいえ: 23/37(62.16%)

項目 賛成 反対
理由 人数 % 理由 人数 %
1 許されればタヌキは性格を変えるとおばあさんは考えているから 7 19.00 だまされやすかったり、悪い人を簡単に信じたりすべきではなく、用心しなければならない 9 24.00
2 愛と寛大さがあるため 11 30.00 愛と許しは不適切な人に与えるべきではなく、邪悪な人は相応の訓戒を受けるべきである 16 43.00
3 幼児教育においては、善行について教えることが最も重要であるから 2 05.00

 おばあさんは親切で寛容な心の持ち主だが、彼女の行動は深刻な惨事をもたらすだけでなく、タヌキに対しても悪い結果をもたらしてしまう。不正直で残酷なタヌキ は、おばあさんを騙して殺したという行為を後悔するどころか、自分の手柄のように思っている。このように、おばあさんの行為は善意に基づいているものの、彼女が思ってもいない結果を引き起こすこととなってしまった。

 大多数の学生 (67%) は、親切なおばあさんがタヌキ、そして、予想外にもその残虐な行為を許したことがあだとなってタヌキの不当な行為により死んでしまうという結末が腑に落ちない。大部分の学生は、信頼と愛を間違った人に与えてはならず、悪人には相応の訓戒を与えなければならないと考えている(43%)。この番組の制作者はとても面白く話を伝えている。この話は、善と悪に対する東洋的な考え方の人生教訓を提示しており、物事の判断において感覚だけを頼りにしないという現代的な分析に基づいている。

b) ウサギのタヌキへの仕打ちに対する考え方

特徴 回答数 %
a.残酷で入念な行動 1 03.00
b.道理にかなった入念な行動 2 05.00
c.巧妙で完璧な行動 23 62.00
d. a.b.cのいずれも正しい 11 30.00
合計 100.00

 人形劇『かちかちやま』は、重要な教訓を与える教育的価値の高い寓話である。タヌキに対するウサギの仕打ちについての学生の評価と考え方を通じて、学生の心構えと考え方が明らかになっている。大多数の学生は、ウサギについての質問において「巧妙で完璧な行動」という答えを選んでいる。言い換えれば、タヌキに正直であるよう諭すためにウサギが使った訓戒に学生は賛同している。

 ウサギの性格とおばあさんの性格は始めから正反対である。愛によってタヌキの心を変えることはできず、それはおばあさんを傷つける属性にさえなる。そのため、ウサギは別の方法を選択する。それは懲戒である。これは残酷な人がまさに受けて当然の教訓である。

 ウサギの行為を「残酷で入念な行動」であると考えた学生は最も少ない。大多数の学生はウサギの行為に賛同し、残酷さと悪に対する意志の強さを示している。

c) 人形劇の登場人物に対する考え方

好き 33/37(89.19%)
嫌い 4/37(10.1%)

DVDセット3において:もっとも印象深い登場人物は?

登場人物 人数 %
おじいさん 9 24.00
男の精 25 68.00
おばあさん 2 05.00
木こり 1 03.00
合計 37 100.00

 人形を使ったアニメーションは学生に良い印象を残している。大多数の学生はこのようなアニメーションを好み、特に見た目が面白い男の精のキャラクターを気に入っている。我々の調査データによると、好きな登場人物は人柄と徳だけで決まるのではなく、役柄の外見も重要な要素である。おじいさんは正直な人物でお話の主人公であるのに、学生が注目しているのは劇で最も際立った外見を持つ男の精であることからもこの点は把握できる。視聴者の印象に残る登場人物は、特別で魅力的なルックスでなければならないことが分かる。

 一方、アニメーションに人形を登場させるということは、身近で伝統的な芸術である人形芝居を子供たちに紹介するという意味で学生の手助けをしているともいえる。

 最近は、2次元アニメーションと3次元アニメーションの比較がよくされるが、依然として人形劇タイプの映像は視聴者を惹きつけていると判断することができる。

5. DVDの使用目的に関する学生の考え方(質問16)

目的 人数 %
娯楽 2 05.00
学習 14 37.83
指導 16 43.24
研究 5 13.51
合計 37 100.00

 この結果はわれわれの当初の予想と同じであり、学生がDVDを利用するとすれば指導と学習という2つの目的に活用する意向であるということが分かる。この点は教育実践に適している。学生の大多数は将来幼稚園の教員になるからだ。現在、彼らは学生である。このため学習が主な要望であるが、数年後には幼稚園の教員になり今度は指導が主な要望となる。このため、これらの3つのDVDセットの活用が、こうした2つの目的のためであるということは理解できる。実際、視聴し始めたときから、学生は娯楽のためにDVDを見ているのではなく、幼児を指導する将来の先生の立場で視聴していた。したがって、DVDの活用目的についての質問では、これらの学生にとって娯楽は副次的な目的で5.00%を占めるにすぎない。

 一方、幼児教育学部の目的は、将来幼児を直接指導することになる学生を訓練することであり、研究者を養成することではない。したがって、DVDを研究のために使うという目的も少ない割合(13.51%)になっている。これら3つのDVDセットにおいて、まず日本での子供への指導法を見出して専攻の学習に活用し(学習目的)、次にそれを実践する機会が訪れた際に、専門性が要求される業務において習得した方法論を使ったり、これらのDVDを幼稚園での教育活動において視覚的な解説として使ったりすることができる(指導目的)。

6. 学生のDVDセットに対する認識

 これら3つのDVDセットを学生はどのように思っているのかを調査した。

 それぞれ独自の意義をもつ3つのDVDセットを比較しようとするものではない。

DVD セット1: 20/37(54.05%) 好き

DVD セット2: 3/37(8.12%) 好き

DVD セット3: 11/37(29.73%) 好き

グラフ:DVDセットに対する学生の関心の度合いの比較

 上記のデータによると、DVDセット1のみ、大多数の学生に高く評価されていて、他の2つのDVDセットについては割合が徐々に減少している。その主な理由は、科学というテーマをさりげなく、いきいきと表現している堅くない番組であるからだ。 DVDセット 1には、体操曲まであり、視聴者を心地よくさせる。加えて、大多数の学生は英語版を完全に理解するための英語力が十分になく、主に映像に頼って話の内容を推測している。科学的内容のDVDセット1は、映像があることで彼らには理解しやすく、この新しいタイプの番組を気に入っている。他の二つのDVDセットは、セット1ほど影響力はないようだ。

 各DVDセットに関する学生の調査を通じて、各DVDセットが視聴者の目にどのように映ったのかが分かる。これは、DVD制作を仕上げる際に参考となる優良なデータベースとなるだろう。

7.幼児が3つのDVDセットを視聴した際の受け取り方に関する学生たちの予想

DVDセット 予測数 理由 人数 %
DVDセット1 10 興味深く、驚くような場面が多数ある 05 13.5
幼児たちの心理と考え方に適している 03 08.1
生活に関連した分かりやすい方法で科学に親しむ 07 18.9
面白く、創造性を高める 02 05.4
DVDセット2 16 キャラクターが同年代で幼児たちの生活に身近である 09 24.3
明るい色彩 08 21.6
詳細が興味深い 05 13.5
素敵でかわいい登場人物 11 29.7
DVDセット3 17 おとぎ話の世界である 11 29.7
日本独自のスタイルを持った美しい風景 03 08.1
中身が濃く、教育的価値も高い 06 16.2
素敵でかわいい登場人物 07 18.9
ドラマチックで心揺さぶられる 02 05.4

 予測数は予想してた通りの37ではなかった。予想通り、各学生は幼児が最も気に入るであろうDVDセットを選んでいるようだ。しかし、実に学生たちは合理的である。学生は幼児たちの年齢を年少(3-4歳)、年中(4-5歳)、年長 (5-6 歳) の3つのグループに分類した。幼児の心理面に基づき、学生は年少と年中の幼児はDVDセット 2と3 が上記の理由で好まれると予想した。一方、年長の幼児は年下の幼児より好奇心が強く、科学に親しむことをより好むのでDVDセット1を気に入ると予想した。このため、予測数は37より多い43になっている。

 一般的に大多数の学生は、DVD2と3が幼児たちに好まれると考えている。これらのDVDは、おとぎ話から道徳を学ぶ(DVDセット 3: こどもにんぎょう劇場)または幼児と同年代の登場人物を見る(DVDセット 2:ざわざわ森のがんこちゃん)という点で、幼児の心理面により適しているからである。われわれはこれらが客観的で正しい考えであると判断する。なぜならば、最も好きなDVDはどれかという質問に大多数の学生がDVDセット1(科学的内容)と答えているのに、幼児たちの関心については自分たちの主観的意見を押しつけるのではなく、専攻における知識と幼児教育の経験に基づいて答えているからである。したがって、学生たちには適切に判断する能力があると思われる。

 この調査から、JAMCO制作のDVDの視聴者は多様になると考えらえる。これらの3つのDVDで、視聴者は関心と実用性に関して、心理、要望、職業に基づいた独自の見解をもっている。

B2. K60プログラムの学生とK61プログラムの学生に対して行った調査の結果(『ふしぎがいっぱい』と『ピコピコポン』)

タオ・ティ・ブゥ

1.DVDを分類する学生の能力:

 JAMCO制作のDVDはテーマにおいて明確な区別がある。したがって、DVDを分類する能力が学生にあるかどうかについて調査を実施した。以下の通りである:

K60 K61
DVD 正確なテーマを組み合わせた 誤ったテーマを組み合わせた 正確なテーマを組み合わせた 誤ったテーマを組み合わせた
人数 % 人数 % 人数 % 人数 %
DVD1
(『ふしぎがいっぱい』)
44 100 0 0 46 100 0 0
DVD2
(『ピコピコポン』)
20 45.4 22 54.6 30 65.2 16 34.8

 DVD1は科学的な内容で映像からの情報によって容易に理解できるため、基本的に学生は正確なテーマと結びつけることができた。反対に、人形を使ったDVD2では、英語による多くの会話を理解することが語学力が十分にない学生にとって難しく、DVDを分類するにあたり、混乱している。

2.科学的内容のDVD(セット1)に対する学生の認識と意見

 この項目では、科学的内容のDVDに対する学生たちの認識と意見を調査した。幼い子供たちに対して一般的な科学に親しむ手助けをすることがこのDVDのテーマなので、調査の質問は、製作者側の内容編成を幼い科学者たちがどう思うかについてと、大多数の学生が惹きつけられた番組の場面に焦点を当てた。調査結果は以下の通りである。

2.1 科学的内容の難易度について分類:一般的な科学および専門性のある科学

No 内容 一般的な科学 専門性のある科学
回答数 回答数 回答数 回答数
K60 K61 K60 K61
1 虫のからだ 43 40 1 2
2 光とかがみ 20 16 25 35
3 かげと太陽 41 46 3 0
4 ものの重さ 35 39 10 5
5 いちばん重いのは? 32 20 11 17
6 電気の通り道 1 0 41 2
7 じしゃくのふしぎ 0 0 45 1
8 いろいろなじしゃく 6 0 36 2

 調査結果から、学生が科学的内容のDVDを観せることに強い関心をもっていることが分かる。大多数の学生が生命科学分野の5つの内容に、次に特化した科学分野の3つの内容に分布している。

2.2 幼稚園での指導ではどのDVDを活用することができるか?

活用目的 回答数
K60 K61
科学に親しむ 42 46
野外活動 2 8
ドラマ 4 9
周囲の環境に親しむ 27 46
育成活動 0 26
小学校算数の記号に親しむ 23 40

 K61の学生(3年生) とK60の学生(4年生)は幼児教育に特化した指導法を十分に学んできているため、これらのDVDの使用は幼稚園の学習活動において柔軟に対応すると把握していることがみてとれる。大半の学生の回答は、「周囲の環境に親しむ」、「科学に親しむ」に集中した。その一方で、「小学校算数の記号に親しむ」、「野外活動」、「ゲーム」、「育成活動」などの創造性豊かな回答も目立った。特に調査によると、(4年生に比べて)3年生の学生については創造性豊かな点が賞賛に値し、DVDを育成活動に活用できると回答している。

2.3 幼児がDVDを鑑賞するにあたって、学生が内容を適切または不適切と判断したものは?

適切な内容 不適切な内容
エピソード 回答数 回答数 エピソード 回答数 回答数
K60 K61 K60 K61
1.虫のからだ 44 40 1.虫のからだ 0 0
2.光とかがみ 39 35 2.光とかがみ 5 10
3.かげと太陽 42 44 3.かげと太陽 2 4
4.ものの重さ 44 44 4.ものの重さ 0 0
5.いちばん重いのは? 44 45 5.いちばん重いのは? 0 0
6.電気の通り道 0 0 6.電気の通り道 44 46
7.じしゃくのふしぎ 38 20 7.じしゃくのふしぎ 6 9
8.いろいろなじしゃく 0 10 8.いろいろなじしゃく 0 0

 大多数の学生の評価の中で、不適切な内容に選ばれた当番組の第6話について考察した。進行役の人物「たっくん」の手のひらの上で、(電池があっても)電球が点灯していなかったという複雑で難しい場面があることが理由で、就学前の子供への指導には活用できないと判断されたようだ。

2.4 DVDの使用に際して、どのDVDが子供の年齢に適しているかについての学生の回答

3-4歳 4-5歳 5-6歳
K60 K61 K60 K61 K60 K61
1.虫のからだ 23 33 4 5 18 20
2.光とかがみ 5 9 22 19 11 14
3.かげと太陽 26 30 10 10 4 8
4.ものの重さ 18 20 15 19 7 8
5.いちばん重いのは? 0 0 27 30 9 10
6.電気の通り道 0 0 0 0 30 30
7.じしゃくのふしぎ 2 9 7 8 19 21
8.いろいろなじしゃく 0 0 17 20 12 15

 調査によると、科学的な内容がとてもよく表現されている映像ではあるが、就学前の児童にとっては理解するのが難しいと評価されているようだ。子供たちの理解力と合致する一般的な科学の内容のみ活用することができると考えている。

2.5 学生が面白いと思ったエピソードは?

K60の回答数 K61の回答数
1.虫のからだ 13 18
2.光とかがみ 5 11
3.かげと太陽 7 4
4.ものの重さ 1 7
5.いちばん重いのは? 1 9
6.電気の通り道 0 12
7.じしゃくのふしぎ 21 19
8.いろいろなじしゃく 2 12

 学生の数が集中していると、特に関心をもっている内容ということになるのだが、複数の内容に分布していた。このことから幅広いあらゆる目的に使えるこのDVDが視聴者にプラスの影響を及ぼしていることがわかる。しかし、割合をみると、特定のDVDが他よりも影響力があるなどのDVD間での差異はみられない。

3.『ピコピコポン』DVD(セット2)に対する学生の認識と考え方

 学生は番組のキャラクターに好感を持っているか、いないか。

 英語力が足りないということがある程度影響し、学生はセット2のDVDの大部分に興味を示さず、キャラクターが視聴者にとってそれほど魅力的ではないとの意見が示された。

4.DVDの用途に関する学生の意見

用途 回答数 回答数
K60 K61
娯楽 2 (4.5%) 7 (15.3%)
学習 20 (45.5%) 25 (54.3%)
指導 22 (50%) 10 (21.7%)
研究 0 4 (8.7%)
合計 44 (100%) 46 (100%)

グラフ:DVDの用途に関する学生の意見

 われわれの当初の予想通り、学生はDVDを指導と学習のために使用する意向である。ほとんどの学生が将来は教員になることから、この考え方は教育実践と両立するものであるといえる。このため、上記の二つの目的にDVDを使う傾向は、理解できる。実にこのDVDを視聴している間でさえ学生たちは娯楽目的で視聴する通常の視聴者とは異なり、将来なるべき幼稚園教諭として最初から観ていた。したがって、このDVDの用途についての質問を通して、娯楽の目的は副次的であるということが分かり、5.00%を占めるだけであった。

 一方、基本的に幼児教育学部の目的は、研究者を養成するというよりも、保育・教育に携わることになる学生を訓練することにある。そのため、DVDを利用する目的が研究のためと答えた人は少数 (13.51%)である。このDVDでは、学生はまず専門教育で活用するために(つまり学習目的で)日本での保育・教育への取り組み方を学ぶ。その後、実際に職務を実践する機会が訪れた際に習得した手法を専門的な業務で活用したり、幼稚園で教育活動を行う際に感覚に訴える方法としてDVDを活用したりするだろう。

5.学生のDVDに対する考え方

 われわれは、学生が各DVDセットを好きであるかを調査したが、各セットは独自の意義を持つため、DVDの比較をしようとするものではない。

セット1: 80.5%(好き)
セット2: 8.12%(好き)

グラフ:学生のDVDに対する考え方

結論と提案

1.結論:

– 学生は各DVDのテーマを正しく把握している。
-言葉の壁はあるが、学生は各 DVDセットの基本的な内容を理解している。
– ほとんどの学生がDVDの視聴に興味を持っており、最もコメントが多かったDVDセットは科学的な内容のDVDであった。
– 学生は理論と現実への理解があるため、DVDセット2と3が子供たちの関心を引くと予想している。
– DVDが活用されるとすれば、学生は主要な二つの目的「指導」と「学習」のために使う意向である。これは実践訓練に適している。学生たちのほとんどは将来、幼稚園の教員になるからだ。現在、彼らは学生である。したがって学習が主な要望であるが、数年後には幼稚園の教員になり、今度は指導が主な要望となる。このため、この2つの目的のためにこれらのDVDセットを活用する意向であり、それは当然といえる。

DVDを鑑賞する学生たち

2.提案:

– 幼児教育学部の学生は、JAMCO制作のDVDを視聴する機会を増やして、学習に活用したいと要望している。
– DVDがベトナム語で吹き替えられ、英語またはベトナム語の字幕が入れば、学生は番組のテーマへの理解を深めることができる。
– JAMCOとハノイ師範大学児童文学センター (CLC)の協力関係はより緊密なものになるだろう。当センターは、JAMCOが視聴者に制作DVDを紹介する際のベトナムでの法的な代表を務める。センターは、番組の台本の準備において示唆に富むアドバイスを提供することができる。

3.追加情報

– DVDをいくつかの幼稚園で視聴してもらったが、幼児たちは科学的発見の内容のDVDを観ることを好み、DVDの特徴を簡単に絵に描くことができた。

3歳児の描いた『ピタゴラスイッチ』の絵/4歳児の描いた『ピタゴラスイッチ』の絵/幼稚園でDVDを視聴する幼児たち


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タオ・ティ・ブゥー、トゥエン・タン・ディン


タオ・ティ・ブゥー

ベトナムのハノイ師範大学 幼児教育学部 文学教育学科 講師

2007ハノイ師範大学 学士号(文献学)
2009ハノイ師範大学 修士号(言語・文学)

著作:
Vu, T.T. & La, T.B.L. (2009). Literature for children (ebook for online study), Hanoi National University of Education, Vietnam.
http://www.cdsplaocai.edu.vn/tin-tuc/ebook/1323964485-mot-so-tai-lieu-dien-tu-hay.htm

Vu, T.T. (2014). Helping children to develop their early literacy skills through the creation of environmental communication and reading at home. Early Childhood Education Journal, No. 4/2014, p28-31

Vu, T.T. (2014). Kind of animal characters and diversity of genre children stories. Magazine of Criticism of Literature and Arts. ISSN 0866-7349 Vol.21- May 2014, p 59-63

Vu, T.T. (2012). Using creative study corner to help upper kindergarten children actively approaching literature works for children. Educational review. ISSN 21896 0866 7476. Vol.9-2012, p.27-30


トゥエン・タン・ディン

ベトナムのハノイ師範大学 幼児教育学部 文学教育学科 講師

2004 ハノイ師範大学 学士号(文献学)
2006 ハノイ師範大学 修士号(文献学)
2013 ハノイ師範大学 博士号(文献学)

著作:
Dinh Thanh Tuyen (2010), Theoris of linguistic Development, Journal of Science, Hanoi University of Education 2, No. 13, pp.37-44

Dinh Thanh Tuyen (9/2011), On the language of communication with children, Journal of Education 270, period 2, pp.15, 16 and 22.

Dinh Thanh Tuyen (2011), Division stage of development according to the communication quality of language - from the pre-language to the early stages of language development, Journal of Education, No. 258, pp.9-11and 43, period 2-3.

Dinh Thanh Tuyen (2012), Joint Attention and language development from the pre-to the early stages of language communication language, Workshop on young reseachers , Hanoi National University of Education,pp. 477-485,5th.

Dinh Thanh Tuyen (8/2012), Process of language comprehensive learning, Journal of Education, No. 292, 17-1, 9 Term 2.

Dinh Thanh Tuyen (2012), The maternal interaction for the development of young children's language, Journal of Science, Hanoi University of Education 2, No. 18, pp.61-69.

Dinh Thanh Tuyen (12/06/2012), Maternal Interaction-basic capacities needed formed in the pre-school teachers in the period of integration, Proceedings of the Workshop on "Models personality preschool teachers during the international integration", Faculty of Early Childhood Education, Hanoi National University of Education, pp.167-174

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