第20回 JAMCOオンライン国際シンポジウム
2012年3月~8月
東日本大震災、テレビは海外にどう伝え、海外はどう受けとめたのか
読者からのコメント(1)
東日本大震災から1年余。津波や原発事故の被害の実態、復興までの道のりの長さが明らかになり、そのうえ、大規模な震災・津波が日本周辺で新たに発生する可能性も指摘されるなか、東日本大震災や原発事故の国際報道に携わった内外のジャーナリストが当時の報道を検証するJAMCOの試みは、今後の大規模災害国際報道についての教訓をえるため、時宜に適っている。
日本のテレビ各局は、東日本大震災発生直後から刻々と被害状況を伝えた。NHKはじめ主要放送事業者は、地震など災害の発生の際には、被害の軽減に役立つ放送を行うことを「放送法」で義務付けられている。この「放送法」の規定は、自然災害が多い日本の特徴である。
歴史を振り返れば、1923年に首都圏に甚大な被害を与えた関東大震災は、ラジオ放送開始前のことだったが、根拠のない流言蜚語を裏付けをとらないまま掲載した新聞が次々と発禁処分を受け、検閲制度の道を開き、報道の自由が打撃を受けたことは、日本でジャーナリズムに携わる者は知っている。NHKは、「国内番組基準」のなかで、災害などの緊急事態に際しては、すすんで情報を提供して、人命を守り、災害の予防と拡大防止に寄与するようつとめるほか、人心に恐怖や不安の念を起させる表現をしないことを定めている。また、災害時対応の研修や訓練を日常的に行ってきた。
東日本大震災の際には、情報を正確かつ迅速に伝え、視聴者には冷静に対処するよう呼びかけたのも、過去の経験や日常の訓練の成果ではあるものの、地震、津波、原発事故と規模が大きいうえ、あまりにも早く、かつ広域に刻々と展開する事態に、メディア側も視聴者側も新たなニュースに目と耳を奪われ、全体像やとるべき行動を十分に把握し、また落ち着いて考えることが困難だったように思われる。
このシンポジウムに参加した在日特派員は、日本のテレビ界の冷静な対応を評価しつつも、とくに原発事故に関する情報内容がすべて真実なのか、信頼できるのかという疑問を抱いたと指摘している。
福島原発事故独立検証委員会の『調査・検証報告書』は、原発事故の教訓として、「3.11以降、多くの国民は体験したことのない原発事故の進展や放出された放射能の影響に対する不安におびえ、血眼になって情報を求めた。しかし、政府は、そうした国民の不安に答える確かな情報提供者としての信頼を勝ち取ることができなかった」、「原発の状況に関していえば、発表された当初よりも状況が悪かったことが後日になって判明するといった展開が繰り返され、政府の情報発信に対する国民の不安や失望感が深まった。また、放射能汚染の拡大や住民退避を懸念する海外に対しては、さらに脆弱な情報発信しか行われなかった」と述べている。
日本のテレビ各局は、震災・原発事故のあと、当時の情報発信や伝達の実態を検証したり、これまでの原発政策や放射能被害状況を検証する番組を放送しはじめた。また、将来に大規模地震が発生した際の放送の確保や情報の伝え方の検討も進めている。
大規模な地震や津波への対策、放射能の被害の影響、さらに原発のあり方の問題は、日本に限らず、これまでにも大きな地震や津波の被害を受けてきたアジア・太平洋地域はじめ、世界的規模で関心がもたれてよい課題であることを考えれば、日本の取り組みは、世界の国々にとって参考になることが多いはずである。この観点での日本からの情報の発信が期待される。
自然災害からも、放射能被害からも安心して暮らすことのでき、人の命を大切にする社会を作ることに貢献することがジャーナリストの重要な使命であることを再認識させたのが、東日本大震災だった。
日本のテレビ各局は、東日本大震災発生直後から刻々と被害状況を伝えた。NHKはじめ主要放送事業者は、地震など災害の発生の際には、被害の軽減に役立つ放送を行うことを「放送法」で義務付けられている。この「放送法」の規定は、自然災害が多い日本の特徴である。
歴史を振り返れば、1923年に首都圏に甚大な被害を与えた関東大震災は、ラジオ放送開始前のことだったが、根拠のない流言蜚語を裏付けをとらないまま掲載した新聞が次々と発禁処分を受け、検閲制度の道を開き、報道の自由が打撃を受けたことは、日本でジャーナリズムに携わる者は知っている。NHKは、「国内番組基準」のなかで、災害などの緊急事態に際しては、すすんで情報を提供して、人命を守り、災害の予防と拡大防止に寄与するようつとめるほか、人心に恐怖や不安の念を起させる表現をしないことを定めている。また、災害時対応の研修や訓練を日常的に行ってきた。
東日本大震災の際には、情報を正確かつ迅速に伝え、視聴者には冷静に対処するよう呼びかけたのも、過去の経験や日常の訓練の成果ではあるものの、地震、津波、原発事故と規模が大きいうえ、あまりにも早く、かつ広域に刻々と展開する事態に、メディア側も視聴者側も新たなニュースに目と耳を奪われ、全体像やとるべき行動を十分に把握し、また落ち着いて考えることが困難だったように思われる。
このシンポジウムに参加した在日特派員は、日本のテレビ界の冷静な対応を評価しつつも、とくに原発事故に関する情報内容がすべて真実なのか、信頼できるのかという疑問を抱いたと指摘している。
福島原発事故独立検証委員会の『調査・検証報告書』は、原発事故の教訓として、「3.11以降、多くの国民は体験したことのない原発事故の進展や放出された放射能の影響に対する不安におびえ、血眼になって情報を求めた。しかし、政府は、そうした国民の不安に答える確かな情報提供者としての信頼を勝ち取ることができなかった」、「原発の状況に関していえば、発表された当初よりも状況が悪かったことが後日になって判明するといった展開が繰り返され、政府の情報発信に対する国民の不安や失望感が深まった。また、放射能汚染の拡大や住民退避を懸念する海外に対しては、さらに脆弱な情報発信しか行われなかった」と述べている。
日本のテレビ各局は、震災・原発事故のあと、当時の情報発信や伝達の実態を検証したり、これまでの原発政策や放射能被害状況を検証する番組を放送しはじめた。また、将来に大規模地震が発生した際の放送の確保や情報の伝え方の検討も進めている。
大規模な地震や津波への対策、放射能の被害の影響、さらに原発のあり方の問題は、日本に限らず、これまでにも大きな地震や津波の被害を受けてきたアジア・太平洋地域はじめ、世界的規模で関心がもたれてよい課題であることを考えれば、日本の取り組みは、世界の国々にとって参考になることが多いはずである。この観点での日本からの情報の発信が期待される。
自然災害からも、放射能被害からも安心して暮らすことのでき、人の命を大切にする社会を作ることに貢献することがジャーナリストの重要な使命であることを再認識させたのが、東日本大震災だった。
村瀬 眞文
立教大学